大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 平成2年(し)52号 決定 1990年4月24日

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は、東京高等裁判所がした逃亡犯罪人引渡法一〇条一項三号の決定は憲法三一条、七六条三項、九八条二項に違反しているというのであり、その前提として、右決定は刑訴法上の決定であって、これに対しては刑訴法の特別抗告が許されると解すべきであり、そう解さないときは憲法八一条の趣旨に反することになると主張する。

しかしながら、右決定は、逃亡犯罪人引渡法に基づき東京高等裁判所が行った特別の決定であって、刑訴法上の決定でないばかりか、逃亡犯罪人引渡法には、これに対し不服申立を認める規定が置かれていないのであるから、右決定に対しては不服申立をすることは許されないと解すべきであり、したがって、本件申立は不適法である。また、右決定の性質にかんがみると、このように解しても憲法八一条に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判例(昭和二二年(れ)第四三号同二三年三月一〇日判決・刑集二巻三号一七五頁、昭和二六年(ク)第一〇九号同三五年七月六日決定・民集一四巻九号一六五七頁、昭和三六年(ク)第四一九号同四〇年六月三〇日決定・民集一九巻四号一〇八九頁、昭和三七年(ク)第二四三号同四〇年六月三〇日決定・民集一九巻四号一一一四頁、昭和三九年(ク)第一一四号同四一年三月二日決定・民集二〇巻三号三六〇頁、昭和三七年(ク)第六四号同四一年一二月二七日決定・民集二〇巻一〇号二二七九頁、昭和四二年(し)第七八号同四四年一二月三日決定・刑集二三巻一二号一五二五頁、昭和四一年(ク)第四〇二号同四五年六月二四日決定・民集二四巻六号六一〇頁、昭和四〇年(ク)第四六四号同四五年一二月一六日決定・民集二四巻一三号二〇九九頁)の趣旨に微して明らかである。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 角田禮次郎 裁判官 大内恒夫 裁判官 四ツ谷巖 裁判官 大堀誠一 裁判官 橋元四郎平)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例